父ちゃんの作るサンドイッチが嫌いだ。
ぼくは中学生のころ、普段は学校給食だが 運動会や文化祭などでお弁当を持参する日がたまにあった。
ぼくの家庭は両親が共働きで、母ちゃんはあまり家事に積極的な人ではなかったので、 お弁当はいつも父ちゃんが作ってくれてた。
父ちゃんは近所でもうわさの怖い父ちゃんだった、それによく理不尽な理由で殴られて怒られた事もある。
反抗期真っ只中のぼくは父ちゃんの作ってくれるお弁当が嫌いだった。
なぜなら、お弁当の日に父ちゃんは決まってサンドイッチを作るからだ。
普通の食パンに卵をはさみ、サランラップで巻いてあるだけの不恰好なサンドイッチ。
お弁当の日、朝起きると決まってリビングの机の上に風呂敷に簡単に包んだサンドイッチがあった。
思春期で繊細だったぼくは、まわりのみんなが持ってくる弁当と少し違っていたことが恥ずかしかった。
「またサンドイッチかよ…」
そんなことをぼやきながら、カバンにサンドイッチを入れて学校へ登校する。
お弁当を食べる時間は なるべくひっそりと食べた。
そして時は過ぎ、社会人になった。
就職先は偶然にも父ちゃんとおなじ業界だ。
なぜなら、そこにしか受からなかったから
社会人ってすごく大変だ。
朝は早いし夜の帰りは遅い。
上司や同僚からの圧力で ストレス性顔面神経麻痺にまでなった。
社会人ってほんとうに大変だ…
そんな時ふと、思った
「父ちゃんはこんな中でも、おれのためにサンドイッチ作ってくれてたんだな…」
父ちゃんが眠い目を擦って朝早く起きて不器用ながらも、ぼくのためにサンドイッチを作ってくれてた風景が思い浮かぶ。
そう思うと、父ちゃんは今まで不器用ではあったがたくさん愛情を注いでくれたんだなぁと感じ、涙が溢れてきた。
「はは、おれ疲れてんのかなぁ…」
社会人になってから親の偉大さやありがたさを年々思い知らされる。
『親孝行したい時に親はなし』
といった言葉がある。
会いたい人にはすぐに会いに行ったほうがいいし、「ありがとう」を伝えたい人にはすぐに伝えに行ったほうがいい。
たとえ小っ恥ずかしい気持ちになったとしても。
ぼくも生きているうちに精一杯、親孝行しておかないとな。
「そろそろ妻が帰ってくる時間だな。今日はご飯でも作って待っていよう」
そうつぶやき、ぼくはPCを閉じてキッチンへと向かった。
吉成 頼太